2010.09.15
トップはただ一人
先日指揮者の小澤征爾さんが大病を克服し、再び舞台に上がるという模様がNHKで放映されていました。私は特にクラシック音楽が趣味というわけではないので指揮者の力量など語ることはできませんが、小澤さんの指揮をする迫力には圧倒されました。そしてとくに目についたのは指揮を執る小澤さんを見つめる演奏者の目です。小澤さんに吸い込まれているように思えました。プロ野球やサッカー日本代表チームの監督にこれまで小澤さんを凌ぐ統率力を持った人がいたでしょうか。十分な見識を持ち、一つの作品に捧げる意欲をこれほど持つリーダーが他にいるでしょうか。経営者であり、かつ経営者の相談に応じる立場にある私は小澤さんのその姿勢を学ぼうと思いました。
組織のトップはただ一人。だからトップです。どのような会社でもよい時も悪いときもあります。一度生まれた商品、サービスが永遠に売れ続けることはありません。成長を続けるには新たな人材の採用や商品開発を行うなど投資をしなければなりません。その投資が正しいか否か、正確に判断し、決定しなければなりません。トップがどれだけの努力をした結果の決定なのかを社員は見ています。そして社員はトップの決意についていこうと会社のために働くのです。
組織が大きくなるほど投資が大きくなり、比例して金融機関からの借入金依存度も上がります。成長期には気にならなかったその額も、会社が停滞期になると、会社によっては資金が回っていればよいと正確な判断ができなくなります。会社の実績がついてくれば金融機関との信頼関係も深くなり、求めに応じて融資を受けやすくなるものです。相手も商売なので借りてくれと頼みに来ることもあります。貸してくれるから借りるのではなく、正確に判断しなければなりません。そのためには正確な決算書を作成しなければなりません。大切な判断材料です。成長を望む会社ほど決算書の詳しい説明を私に求めます。会社は年に一度必ず決算を行い、税務署へ確定申告書を提出しなければなりませんが、そのためだけに毎月試算表(会社の成績表)を作成するのではありません。トップが会社の存続をかけて判断を行うための大切な資料です。
優秀な営業マンであるあなたが独立を考えているとします。これまでの実績から独立後も今まで以上に収益を上げる自信があるのでしょう。しかし、それはあくまでも個人の営業力だけであり、会社経営という面では不安もあると思います。ここまで書いたとおりトップの仕事はこれまでの営業という仕事とは全く異なります。演奏がうまいからと言って優秀な指揮者に必ずしもなれないことはもうお分かりのことと思います。